あれから5日しか経っていないのですが、ショックすぎて遠い過去の出来事のように感じます。未だに頭の中が整理できて無いですが忘れないうちに書きたいことを書きます。
コロナ禍によるインターナショナルマッチ中断明けの2020年9月以降フランスはUEFAネーションズリーグと2022W杯予選、親善試合を戦ってきました。その中でクロアチア、ポルトガル、スウェーデンといった強豪には負けませんでしたが、親善試合のフィンランド戦では0-2の敗戦。さらにはウクライナとのW杯予選の初戦も引き分けていて、中途半端に攻めてくる場合はまだしも、相手が割り切って引いて戦ってくる場合は攻めあぐねる事が多かったです。
確かにサッカーはそういうものだと思います。攻めてる側が中々点を決められずに時間が過ぎて行くと、精神的、肉体的に守っている相手が有利になってきます。近年のドイツ代表しかり、EURO2016決勝しかり。それは仕方ない事だと思うんです。問題はそこでは無くてそうなった時にどうするかチームで決まり事が無く選手個々がバラバラになってしまう事。そう言う状況でデシャンが手を打つのが遅い事。これは2012年の就任以来改善されていない点で、優勝した2018W杯でも初戦のオーストラリア戦がまさにそういった展開でした。
前半
負けた後3バックがうまくいかなかったという指摘が多かったですが、(多分日本では解説の安永さんがそう言ったから)3バックがうまくいかなかったというよりもラングレの守備が非常に軽かっただけのように思います。誰かのせいにはしたくないですが、バルサでのプレーを見ても好不調の波が激しくパスが上手いというだけで、守備面に関してはアカンジ、エルヴェディにも劣ると思っています。(ごめんね)
点を取られるまでは攻撃面はそんなに悪くなかったですが、その後明らかに試合は停滞。結局デシャンは前半終了まで10分もないくらいの時間で4バックに戻します。
後半
後半開始からはラングレに代えてコマンを投入。思えば5年前のEURO2016でもコマンは貴重なジョーカーでしたが、順調に世界屈指のウイングに成長しました。
しかし対して流れは変わらず決定機を作られる体たらく。後半9分にはW杯優勝のヒーローパヴァールがPKを献上。雰囲気は最悪。もうだめかと思ったけどキャプテンが起死回生のビッグセーブ!!!これによって一気に生き返った3人の攻撃陣のマジックでわずか4分で逆転に成功します。
その後もフランスが攻め込み続け、たまらずスイスのペトコビッチ監督が後半27分に動きます。エースシャキリに代えてガブラノビッチ、ヴィドマーに代えてエムバブ。しかしその2分後ポグバがこの位置からの彼らしいスーパーゴール。
ポグバのパワーならそれほど脚を振らなくてもあれくらいのスピードのシュートが打てるんですね…
マンチェスター・ユナイテッドが彼を活かしきれてないのがよくわかります。
2点差にされたスイスは後半33分にさらに2人を交代。エンボロ、ツバーというこれまたエース級の選手を下げます。
そして後半35分。
コマンとラビオの2人が中に入りすぎた事により右サイドバックのエムバブがドフリー状態に。
エムバブがクロスをあげると、ヴァランとキンペンベの間をセフェロビッチが飛び込みヘディングでゴール。ラビオは誰かをマークするわけでもなく何のためにいるのか分からない状態でしたが、サイドバックに慣れてない事を考えれば、可哀想かな…
ヴァランとキンペンベの2人がクロスに対応出来なかったのはEURO2004のギリシャ戦でテュラムとシルベストルが2人して中途半端になってしまったのとそっくりでした。以下の写真のようにクロスを上げられる前ヴァランはガブラノビッチを、キンペンベはセフェロビッチを2回同じタイミングでチラッと見ています。キンペンベは身体をぶつけなくても自分の身長より高いクロスが来ないと思ったのかな?…ヴァランはどちらに対応すれば良いか考える間もなくクロスに対応出来なかった感じ。
とにかくこれでスイスに勢いがついてしまいます。
後半39分にはリカルド・ロドリゲスのミドルからガブラノビッチにネットを揺らされますがオフサイドに救われます。はい…この大事な時間帯でラビオ君が完全に左サイドバックとして、ディフェンスラインの1人として機能してません。写真を見ても分かる様にこれはたしかにオフサイドですが、ラビオはラインを全く意識していませんしパヴァールはボールウォッチャーです。
フェルラン・メンディが怪我をせずに、使われなかったズマやデュボア、そしてラングレの代わりに選ばれてたらと思ってしまいました。このオフサイド判定はフランスにとって非常に運が良かったはずでしたが、この後もスイスの勢いは止まりません。
後半42分、スイスはDFを1人削りFWのメフメディを投入。守備時にはバルガスが左サイドバックに下がり4バックになりますが、バルガスも攻撃時にはかなり高い位置に上がっていました。
同時に、対するフランスもグリーズマンに代えてムサ・シソコ。グリーズマンはこれで自身のEUROが終わるとは思ってなかったはず(T-T)
結果論ですが、疲れが見えていたとはいえ、その後のプレースキック、延長戦、PKなどを考えると失敗だったと言わざるを得ません。ムサ・シソコはいいプレーをしてましたけども…
またEURO2004の例えで申し訳ないですが、イタリアvsスウェーデンのトラパットーニ、フランスvsイングランドのエリクソン監督のように相手にあと1点を追われている状況で逃げ切りを意識した交代をする監督は時代遅れだと言う記事がありました。当時モナコをチャンピオンズリーグ決勝に導き、モウリーニョと世界No,1の若手監督の座を争ったデシャンは17年後、彼らと同じ間違いを犯しました。もちろん逃げ切りを意識した交代ではなく疲れていたからかもしれません。でもそうだとしてもテュラムやジルー、ベン・イェデルなどと交代していればとも思いました。それに疲れているのはベンゼマ、エンバペも同じでした。
そして後半44分にはファスナハトのタックルからボールを奪われて、ジャカがボールキープ。このシーン、キンペンベの視界にはガブラノビッチと自身の裏を取ろうとするファスナハトがいますが、キンペンベはファスナハトが走り込もうとする裏のスペースを埋めようとします。するとどうでしょう?
キンペンベは消えましたw
これまた結果論ですが、ファスナハトにもし裏のスペースを取られるとしてもキンペンベとの距離はあるし、ロブパスをさせないようにリトリートするだけでもよかったと思います。最悪ロリスが飛び出したりもあるし。確かにラビオが遅れてるし外に開いてたので危険ではありますが、左のスペースを埋めようとした事で中央にスペースが空いてしまい、ガブラノビッチの素晴らしい身のこなしもあり失点してしまいました。
そして下の写真、延長突入間際のジャカのロングパスからメフメディに渡ったシーンも結局はキンペンベとラビオの連携不足によるもので、守備時の動きでは明らかにラビオが苦労していました。メフメディがジダンやベルカンプ並みのトラップをしていたらフランスは4-3で負けていたかも。この直後ムサ・シソコのクロスからコマンの決定機がバーに弾かれるシーンもあったので90分ではどちらが勝ってもおかしくない、とんでもない名勝負になってしまいました。
延長戦
延長に持ち込んだ事でスイスはセフェロビッチを下げてバランスを取ります。
フランスも疲れの見えるベンゼマをジルーと交代。延長前半ではコマンがドリブルで奮闘。延長後半4分にはコマンのドリブルが奪われそうになりながらも粘りポグバへパス、ポグバの素晴らしいスルーパスからエンバペが決定機を迎えますが、この得意な角度で何故か左足でのシュートを選択。結局疲れもありミートせずに絶好のチャンスを逃しました。
その1分後、コマンの負傷を心配したデシャンはついに私の大好きなリリアンの息子、マルクス・テュラムを投入します❣️
テュラムはドリブルから2回チャンスを作ったので、やはりグリーズマンとの交代でFWを4人にするなど、デシャンには強気の采配を見せてほしかった…
延長後半8分ポグバの素晴らしいアウトサイドのスルーパスから左サイドのテュラム、そしてテュラムのマイナスのパスからジルーが決定機を迎えますがシュートはエンバペに当たってしまいます。
フランスの最後のチャンスは延長後半13分のジルーのヘディング。そして最後にジャカのフリーキックが外れたところで120分が終了。この時点でフランスの運命は決まっていたのかもしれません。
ロリスは試合中に1本止めたものの、PK戦では1本以外反応できないか、逆方向。疲れていたエンバペが5人目の時点で既に運命は決していて、甘いコースのシュートはゾマーに止められてしまいました。
こうして史上最強ともいわれたレ・ブルーはブダペストとブカレストでの東欧3試合で1勝も出来ずに敗退。世界王者の貫禄と圧倒的な個の力を見せつける時間帯もあり、延長では圧していましたが、2006年W杯に続いてビッグトーナメントでのPK戦をモノにする事が出来ませんでした。つまり2008〜2012にスペインが達成したビッグトーナメント3連覇の夢はお預けに...
原因はたくさんあるけどやっぱりこの試合勝てば一気に勢いづいただろうし、残念。2018W杯のアルゼンチン戦は逆転されて逆転して2点差を1点差にされながらも逃げ切ったけど、今回は2点差を追いつかれた。こうしてまとめてみるとやっぱり試合とは違う要素で1番大きかったのは左サイドバック2人の怪我かな...そしてデシャンの延長戦を考えなかった采配と選手たちの慢心。2022W杯ではハングリー精神を取り戻して2連覇を果たしてほしい。